The Man From 70's/salco
はおおよそ盛夏の如き確信を与えて
くれるのだ。そして懐かしい。
これこそは安逸のファンタズム以外の一体何であろう。現在の、
まぐわって寝て食って働いて帰ってテレビを観るだけの毎日に比ぶるべく
もなく、遡れば遡るほど爽快で甘美な世界が入れ子式に展開するのであっ
た。そして最後は乳白色の沐浴、記憶以前の知覚世界に至る。ああ天国、
唯一実存的な。
してみれば逸楽とは忘我にあるのではなく、自己認識の牢獄に桃源郷を
幻視する試みであるらしい。
その余情に浸りながら、一方でそれを寂しく眺めやる自分がいるのも事実
で、男は思う。
そうさ、人生の盛りを過ぎてしまったんだから当たり前だ
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