The Man From 70's/salco
とつおいつ何日か考え、思い切って酒色の付き合いを犠牲に家路を辿った。
初めは怯えた目で見迎えるだけだった女房だが、浮いた金が全て繰入れに
なるので、ひと月も経つとまんざらでもない様子を見せるようにはなり、
そんなわけで初めて心身の和合を見た結果、またしても着床と相成った。
実際、重いつわりを乗り越えて、
「この子はきついから、きっと男の子だね」などと
スイカ泥棒のような腹を撫でながら女房が寂しく微笑むところまでは
行ったのだ。
ところが男は眼帯に慣れることがまだできなかった。
女房のどす黒い乳暈や毛深くなった腹にはくすぐったい喜ばしさを覚える
のに、左眼窩を封印してしまうと
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