魚座の裏切り者の歌 / ****'04/小野 一縷
 

夜明け前
夜を操る 鳥の声

「この歌で夜を叫ぶ 産声の主は一体 何某か?」

黒檀の夜の中心で
一羽の巨大な鳥の翼に
覆われて 視界は黒く埋められた
聴覚で見ろと
胸の熱い 心臓の羽ばたきで 告げてくる


響き零れる音の色
なんて針の尖端の点が涙と輝くんだ
黒い月下の虹の色に


なんて剃刀の刃の薄く走る眩しさだ
黒い水上の焔の色に 刺し焼き切れる 
可視線上の後 縮まった視神経


チリチリと 燃え伸びる
眼下の世界 地面 重力
引力を押し戻す 夜空の上昇
黒い気流


疾風 切風 突風 熱風
地鳴りを引き連れてくる 風また風

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