犬の糞/salco
 
来るのだ
決してそれは古びた夢の残骸などではなく

世の中の、
社会人と呼ばれる形骸に取り残されて
歩く風体すらあきらかに違うおのれが
今や青年時代の錆びついた矜持のせいで
生誕の自分からさえ打ち捨てられた時
内臓にまで食い込んでいる
鎖を振りほどこうと彼はガラスを割り
女房を殴ってもがいたものだ

どこかで靴を履き違え
どこかで道を曲がり損ねて
気が付くとそこには、
コタツに下肢を突っ込んだ
酒焼けの六十男の体があるだけ
脱獄をとうに諦めたヤニ臭い心が
少年時代のおのれに向かって
日がなすすり泣いているだけ

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