犬の糞/salco
 
雨に天井も破れた廃屋で
コタツに硬直した下肢を突っ込んだまま
つけ放したTVと電灯に照らされ数日間
干からびて死んでいた歯の無い男が
私の父親の人生の終わり

ひねくれた寂しい野良犬は
獲物を捕れない意気地のなさを
孤高と呼んで泣いていた
生活に絡め取られた夢の残骸を
毛沢東の幻影に抱かせて
それをしっかり握りしめ
果てない自伝を書いていた
自分でさえも読めぬ字で

世の中の、
男と呼ばれる人々は
駅のホームやエスカレーターに
恥じる事ない身なりをして、
それがネズミの幸福と呼ばれようとも
ひとかけらのIDを問われれば、
いつでも眼前の警官に示す事が出来る
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