冬のさくら/月乃助
て
ここまでやってくる
カモメたちさえも、体を寄せ合い
どうしたって、男の方が赤い口紅なのですね
簡単にわすれられる
海原を一人ゆくように
からっぽになって
桜の花をそこにみたして、こぼれおちるほどに
香りにさそわれたなら
それで、良いのですね
愛しさをいつから持ち始めたのか
それさえ覚えていないのです
ずっと、胸にしまったままでもよかったのに
きみの部屋の鍵をにぎりしめながら
使うことができずに、
冷たい海の
水の中を歩きたく
なりました
子ども達のことも忘れて今は、
ただ 砂浜の砂の数をかぞえるように
途方もなくなって、
しまっているのです
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