詞花集、文字たちのアイウオーレ/小池房枝
ろに
土がやせてしまわないように土ごと裏返しに
本当は幾らでも生えていて欲しい
一面に柔らかな下草の緑
草の波、草の海に埋もれてしまわない程度にだけ
背の高い花々
そこかしこに点々と花と実の絶えない果樹
けれどわたしは天使ではないので
小さな庭の園丁なので
種も蒔きますし苗を植えもしますが
いろいろ切り詰めてまわります
水をやり
溝を切り
今だけはごめんねと
どうせ絶対に根絶やしになどできない雑草たちを引き抜き
限られた地面に咲かせられるはずの花の幾つかは
いつでも何か咲いていてくれることを
夢見、願って
街のアスファルトや海や砂漠や
押し寄せてくる野生の緑の津波の中で
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