雨が透明なのは思い出だから/小川 葉
 
 
 
あの日の雨が
まだ降りつづけている

ぼくはきみの
短い小指を思い出し
きみは普段走り慣れた道を
はじめて走る道のように
車を飛ばしてぼくを思い出している

出口をさがしていたのだ
入口を見つけてしまったから

過ぎ去った日々
時の速さは
あの日の雨と変わらないまま

また会うだろうか
少し年老いたきみとぼくが
この世界から
いつか消えてなくなるまでに

雨が透明なのは思い出だから
あの日の雨が
まだ降りつづけている
 
 
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