毒見役としての僕の為に/高梁サトル
 
捨てて

「重荷を背負い 迫害を受けても おまえを愛しぬくと誓う」

嗚呼 無知なるペンは なんとよく滑ることか
英雄と謳われたあの男も こうして異国の女王に
恋文を書いたのだろう およそ自分の欲望の為に
それもまた 今夜はいい



偉大なる死に辿り着く 道のりは険しい
それまでは押し黙って 俯き 黙々と荒野を歩むのだ
太陽も海も大地も何も 僕たちの闘争を妨げはしない
枯渇した人知の泉で 動植物の嘲笑が聞こえるよ
生命とは贄のように在るべきだとね

数千億年の座興に終わる 僕たちの魂が救われますように
残欠された 易しい空想が泣いている



いくら何を話しても満足出来ないのは、
誰もあの人ではないからと知っているよ
ならばそうだ、
毎晩少しずつ毒を飲んで慣らしてゆけばいい
そうすれば少しずつ、
耐え難い苦しみも緩和されてゆくだろうからね

この小さな杯を飲み干して
さあ、よくおやすみ、今日の僕

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