夜汽車/三奈
私を降ろしたあの汽車は
星の路へと駆け上がる
手には破られた乗車券
夢を追うことに疲れたんだ
信じていた言葉の羅列も
いつしか色を失くしてしまった
思い出すのは、仲間の笑顔
あぁ、たぶんもう
交じりあう事などないだろうけど
月が照らす小さな駅
「次の汽車はいつですか?」
人に問うても返事なし
ただ一人駅員だけが
「貴女次第じゃないですか?」と微笑んだ。
生きてるだけで精一杯さ
次の汽車など見つからない
それでも世界から消える為の道具は
全部捨ててここにいる
立ってるんだ
しっかりと
だからもしまた巡り合えるなら
その事だけは「偉い」と言って褒めてほしい
遠い駅から送るメッセージ
「私はまだ、世界(ここ)にいるよ」
春まだ遠いこの場所で
汽笛の音を待っている
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