忘れられた女/望月 ゆき
二十年ぶりに訪れたその町は
すっかり変わり果てていた
とはいえ
うるおぼえながらに車を走らせる
と道路沿いに赤い自販機が目にとまる
そういえば喉が渇いた
車をとめて自販機の前に立つ
すると自販機にはボタンが一つだけだ
どうしたものかと悩むぼくの後ろに
初老の男が並んだので先をゆずる
男は小銭を入れボタンを押す
ガシャンと音をたてて缶が落ちる
男はそれを取り出すと
「お、今日はコーラか」と言うが早いか飲み干した
男の話によると
昔この町の一人の女が
この場所で愛する男と待ち合わせをした
ところが待ち合わせの時間を過ぎても男は現れず
女はそれでも待って
待っ
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