『コインロッカー』/東雲 李葉
 
に。
微かに震える細い指をぎゅっと握る足りない指。
300円が じゃりじゃり と音を立てて飲み込まれた。
鍵を女性に渡したら、「うまくいくさ」と力強く。
彼女はきっと鍵を開けには来ないだろう。




違う意味を持つもの達が皆主人の帰りを待っている。
閉めた人と開けた人の違いなど彼らにとってはどうでもいい。




500円のロッカーに人は住めるかしらと尋ねてきた人。
「どうですかねえ」と愛想笑いを浮かべる僕。
「100円じゃあまりにも狭いから」って。
ちゃりちゃりちゃりちゃりちゃり 無機質に投下された硬貨。
肩の荷が下りた顔で颯爽と繁華街へと向かう足取り。

もしもし、鍵を忘れていますよ。中身は僕が預かりますね。
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