『コインロッカー』/東雲 李葉
家出少女がピンクの小さなリュックをロッカーに。
少し思い詰めた顔で化粧を直して笑顔を作って。
100円が ちゃりん と音を立てて吸い込まれる。
胸ポケットに鍵をしまったらどこかに電話を甘えた声で。
細い脚を揺らしながら明日からの糧を稼ぐのだろう。
※
くたびれたサラリーマンが旅行鞄とエコバッグをロッカーに。
迷いは恐らく断ち切れて感情を何も貼り付けていない。
200円が ちゃりちゃりっ と落ちていく。
鍵をロッカーの下に隠して会社鞄を大事に抱える。
あ、はい。その電車で行けますよ。どうぞ、お気を付けて。
※
仲睦まじい男女がキャリーカーをロッカーに。
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