【 逃げ回るネズミ 】/豊嶋祐匠
 
 
 
 
 
 小学生の頃
 
 うちのネズミ捕りにかかった
 
 一匹の親ネズミを
 
 
 母親は
 
 バケツに水をためて
 
 ネズミ捕りごと沈めた
 
 
 
 
 逃げ場の無い
 
 水面を求めて
 
 ネズミはぐるぐると回る
 
 
 
 
 俺は
 
 そのネズミと
 
 勝負をするように息を止め
 
 
 ネズミが
 
 楽になる頃
 
 
 俺も
 
 申し訳なさそうに
 
 大きく深呼吸をした
 
 
 
 
 初めて
 
 死のふちを
 
 覗き込んだ気がした
 
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