家出のよる/吉岡ペペロ
ら友達が出入りしていた
夕方にもなると私服の友達で賑わった
学校のこと、勉強のこと、女の子のこと、お笑い番組や芸能界のこと、
その日はそれぞれの親のことを話していた
ちょっと遠いこころになって聞いていた
ぼくには親がいなかった
家出しようよ、
いつのまにかそんな話になっていた
ぼくには家出をする理由がなかった
いや、友達にもなかったのかも知れない
院長夫人にご飯よと声をかけられるまえに
ぼくたちは家出を決行した
二月だった
あたりはもう暗くて
ぼくたちは市営球場に向かっていた
みんな甘えている
家出といっても帰る時間が遅くなるだけのことだ
院長夫婦と妹に申し訳ない気持ちになっていた
ところが誰ひとり家に帰らなかった
ぼく以外さむいさむいと言いながら寝てしまった
ぼくは何本目かの煙草を吸いながら
ずっとこんな曖昧なよるのなかにいたと思った
ぼくに心配させるべきひとはいなかった
だからじぶんにだけは
家出の理由があるような気がした
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