そのベンチに置かれた一対の革靴について/瑠王
僕が知っているあどけない顔をした少女は
今ではとても優しい母親の顔をしているのだろう
もしも君が夕陽を眺めるために
また窓辺に立つことがあるのなら
君に一羽の鳩を贈ろうと思う
もう二度と逢うことはないだろう君へ
今の君がこれを読んだらどんな顔をするだろう
僕には知るよしもないか
長年履きならしたこの靴を
ここに置いていこうと思う
せめて靴くらいは
ずっと対でいられるように
紐と紐とをしっかりと結んでおくよ
しばらくは裸足で歩かなきゃならない
だけどそろそろ新しい靴を探しにいかなくちゃ
陽が暮れる前に
それでは
今までずっとありがとう
さようなら
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