帰れない/
 
一つだったからね

誰もが皆、何も怖くなかった
立てなくなるほど殴られたけど
油にまみれて飛行機を見送れば
やがては幸せが来ると信じていた

当たり前だけど、いつかは帰るつもりだったから



玉が砕ける音を知っているかい?

仕方ないと解っていたけど誰も何も言わなかった
もう死ぬ事もできず泣く暇もなく解散になった
兵隊さんは皆汽車に乗るというから
荷物ひとつで一緒に乗ったら

その行き先に
僕の故郷の名前は無かった



皆帰っていった
僕はどこに帰ればいい?
皆素直で誠実で
何も知らなかったから
渡されたお守りを開けたら
砕け散ってば
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