内がわと外がわ/たちばなまこと
熱くたぎらせ
外がわでは氷雪に厚く閉ざされているころ
思い出すのは
寒気が最後の力で踊り狂う吹雪の真夜中の
詩と
詩のコミュニティーサイトと
除雪車が連続でたてる鈴のように愛らしいタイヤチェーンの音と
それに対する私のコメントと
まだ見ぬ仲間たちのコメントと
ひとりの部屋と
小さくなった熱、余韻、残り香
好きだった桃色の嵐
鈴の音が過ぎ去った後の
無
それはたしかに
熱く
生きていた
今夜は雨の予報
それは春の予報ですか
少しあたたかいであろう雨を
空を仰ぎ
すべて受け入れる心構えは出来ている
何かよ
私からふたたび生まれなさい
そんなふうにときどきは思い出して
手の甲の涙を舐めてみてもいいと
信じたい
私がもし ずっとひとりでも
母として
何かが生まれつづける子宮を
内がわにも外がわにも持ちつづけるために
守るために
不器用に
ひらめくままに 詩を描く
ぬるま湯の 夕暮れどきの お迎えに 向かう川沿いわらべうたをうたう
内がわは やわらかいのに 外がわだけは
つよいふり
戻る 編 削 Point(9)