F型観測機は如何にして飛んだか/影山影司
頭と金が足りない女がいた
木星に住む男へ会いに
腹の子を隠して冷凍睡眠機にもぐりこむ
腹の子の名はフローズン
木星軌道で育った胎児
氷漬けの母の生き血を啜る
フローズンの毛布は母の遺体
干からびた皮膚を突き破り
あぎゃあと泣いて助けを求めた
氷漬けのフローズン
氷だけのフローズン
不凍液の涎をこぼし
無重力低温資材庫で霜をなでる
無重力で育てば『歩く』の意味を知らず
『食べる』は啜る で 『世界』は四角い
体は丸く脆く醜く 細く固く漂う
やたらとまだらの模様が目立つ白い肌
「地球にはローストビーフという男がいる
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