歯の中は痛い/番田 
 
僕はずいぶんと部屋で歯が痛んだ。虫歯なのかも知れないと思った。カラスの声みたいに鳴いた。それともこの声は単なる自嘲なのだろうか。含み笑いもなんとなく体から生まれてくるよ。わからないけれど、今日も何も食べないまま部屋で眠るしかなさそうだ。

松屋は黄色い看板で、吉野家はさっぱりとしたオレンジ色。どちらを取るべきかについてをいつもとても迷った。わからないけれど、牛丼を食べに、いるところから出かけるしかなさそうだった。店の値引き大会もいつのまにか終わり、どこで遊んだらいいのかさっぱり知るすべもない。

歩かされていくのだということを感じさせられている、寂しい風が吹いていた。誰もいない一日を、どこまでも歩かされていく。そこに話し声だけが僕の小さなささやきとなって、僕のそばを駆け抜けさせられていった。僕のその言葉のひとつですらもない道に、僕はもう人や動物の姿や形ではなかった。

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