slow/宮野
うしろ向きに歩く
温い風が背中にささって
微妙な痛みを感じている
「すべての季節がおわったらあいに来てください」と
そう言ってきえていったきみ
はじまりを忘れてしまったから
もうあいにはゆけないよと
伝える術もないから
どうしようもなくて
でも立ち止まる勇気すらないから
とりあえず歩く
曖昧な感情
冷えた空気と熱をもった光、
夜があけたばかりでは
のろのろと起動するだけで
安心という世界はすぐにできない
・行進する両足
・呼吸をするからだ
・白黒映画みたいな脳内
・うしろに流れる視界
一定の周期でおとずれる変化を
目を伏せて知らんふりをして
見逃してしまうおろかさに
ただ溜息をつく
おわりに近づいてゆく
そのことにはきづいている
なだらかに下り坂はつづき
ゆるやかに失速する
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