水たまりには世界が写っている/あ。
夏
見上げた夜空はひっきりなしにちかちか瞬いてたし
それを写した琵琶湖の水もゆらゆら揺らいでいた
空の大きさに限りはないだろうに
一つの湖の中にだっておさまるし
気付かれない水たまりの中にだって存在する
もしかしたら知らないところで
意外と簡単に仕組みは出来上がってるのかもしれない
かばんの中からキーケースを取り出し
鍵を差し込もうとしたときにふと思う
次に雨や雪が降ったときには
空の欠片も水の切れ端もすくい取れるように
お気に入りの銀スプーンを持っていこう
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