冬/音遥
 



『今年も雪だるま作ろうか。』


『雪遊びもいいけど風邪ひいちゃだめだよ。』


そんな話をしていたけれど、子供はもう聞いていないようだ。
かわいらしい外装の店を見つけると、急に走り出した。




『サンタさんにこれもらうんだ。早く手紙書かなきゃ。』




大きなクマのぬいぐるみを見つけて、子供はそう言った。
その顔には、冬に対する不安など、ひとかけらも見えなかった。




やはり僕はこのまま消えるわけにはいかないようだ。
時には憎まれもするだろう。
だけど、必要とされているのに消えてしまうわけにはいかない。


冬は、少し微笑んだような顔をして冷たい街に消えていった。
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