無題/手乗川文鳥
 
全ての大人たちが育ててきた
倦怠の樹木を
僕は薙ぎ倒す




僕はもう帰ってこない
そこにいるのは丁重に新調された身代わりの僕だ
君は変わらず新しい僕を愛し続けるだろう
身代わりの僕はそれを拒絶しない
与えられたものを飲み込む用意ができている
そして帰らない僕の葬列を
新しい僕たちがくらい顔で作る
君は笑っている




やがて世界は惰性で動くことをやめる
その前に僕は空を撃ち落とし
海を捲り取る
身勝手な思想で
僕は銃声を響かせる
楽隊の風貌で



美しいと声を出し
途端に恥ずかしくなった生命に
僕は逃げることから訣別する
一足先に行こう
次は君に
季節を殺す武器が渡される
選択はご自由に
そのパンの味だけ
僕は忘れずに出ていく
そうして二度と
戻ってこない




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