音楽/手乗川文鳥
 




1 ピアノ

誰もいない地平で
黒いこども達が踊っている
輪になって
誰もいない地平で
黒いこども達が歌っている
よその国の歌を

どこに置き忘れたのか
私の鍵盤は
全て白い



2 チェロ

罵る言葉さえ
美しく見えた

過換気により
真夜中は部屋の隅へ
毛布をケープにして
煙草に火を灯し
聞きかじりの歌で
祈っている



3 ウッドベース

高い鼻筋が頬に触れる感覚、が
失われた見えないもの、を
より強く
確かにするだろう

やがて私の爪にも
赤いネイルが塗られる
強く固められた両手の指先も
細胞は私をただの女に戻す

君の人となりを
如何に引用しようとも
信号は
二度と変わらない



4 喉

聞き慣れない音が
これから日常の靴となる
そう思って
居心地の悪さに竦んだ

すっかり履き潰してしまったが
新しい靴を手にする予定は
不思議とない






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