昨日の僕とフランスと/番田 
 
ばらだった。添乗員が、使い込まれたキャスターをそこにゴトゴトと転がして、向こうの通路へと通り過ぎていく姿がぼんやりと見えた。アイポッドがあり、スナック菓子の袋がそこにきらめき、靴下がもうひどく臭かった。太陽光の角度があると、服の色やバックの色は少しもそこに即していない。一席に与えられたそのひざかけだけではとうていこのフランスまでの航路を通過していくにはとても難しいように思えた。

ロシア上空を過ぎていく飛行機の中だけひどく寒かった。そこでもう一度フランスの風景や食べ物、すれ違う人々の身なりが与える影響へとえいやっと、逃げることにした。自分がなぜフランスにいくのだろうと僕は考えていると、何も僕に
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