「地図の街」/月乃助
 
のはなし

言葉にすれば なにもかも
重さなどがなくて、うかれたように
偽りの街と眺めながら
迷いながら、
与えられる自由をこの街で手に入れる

無数の通りの走る影
どこまでも限りあるもの、と つぶやきながら
期待ばかりが彷徨う
ほら、教会のすぐ先に家がある
ここからだったら、夕日だって美しい
信じることもできそうな、
色紙をちぎったような
落陽はここにはのっていないのです

ひとつひとつ
建物の屋根の色と、通り過ぎる車の
おもちゃのような景色にため息をつきながら
もう戻りましょうか
そこに待つ人がいたとしても
この街に暮らすのは、そんなに嫌ですか

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