白道めぐり/古月
 
い腕のなお白いこと
行く先の見えぬ真白い闇のなか
不思議と心は安らかで
恐れはない


瞼を塞いでお遣りよ
何処の誰とも知らない
女が微笑む
人は死んだら仏に成るってさ
そりゃあ随分と嬉しゅう御座んすね
雨は強くなるばかりで
一向に止みそうにない


満開の桜が咲く
白い道の上を
わたしは手を曳かれ
歩いている
牡丹雪のような花びらが
舞い落ちては積もり
それがまた風に浚われては積もり
往く先に白い道を作る
手を曳く人の顔は知れないが
何処か懐かしい匂いがする
柔らかな手の平の感触は
いつか
どこか


何故生んだ
何故生んだと
鳥が鳴いた
そう云った


気がつけば
瞼を浸す泥の川にいて震える
腹の奥が酷く熱い
触れれば触れた悉くが痛み
凍える頬を叩く雨は温い


 *


白きみち御首は落ちて流るれど
都の唄をぞ口遊みける
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