過去で生きる/嘘而
 
まぶたを閉じると異世界でしたので、
わたしはかんがえました



まっくらな空気のなかに
小さな街灯がひとつ、ありました
遠くにみえる微かなひかりは
観覧車でした
むこうに人影がありましたが、
わたしは気にせず
夜空に星をつくっておりました



こきゅうをすると別世界でしたので、
わたしはうれしくなりました



さんそを反射させると
透明なおんなのこがおりました
つめたくなった肌が
少しずつ泣くので
わたしも泣きたくなりました
(星をつくるのはやめました)
(何度つくっても、失敗ばかりするから)



しんぞうを動かすと裏街道でしたので、
わたしはおもいだしました



むかし、ここに住んでおりました
今はカラスになってしまいましたが、
むかし、ここは人でした
古びたラジオからきこえる雑音に
むかし、恋をしておりました
古びたストーブのあたたかい吐息に
むかし、恋をしておりました



あなたが死んでしまったように
わたしも過去で生きております



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