千里眼と、赤い花/六一介
 

マジックの話をしよう、と「み」はいう。
床の上に毛布を敷いただけの寝床で、腹ばいのまま、
三枚のなかから、必ずお前が選ぶコインをあててみせよう、と。
そういいながらとても愉快そうに背を波打たせる。
必ず、だ。どうだ、おもしろいだろう?
このマジックのこつはな、こうやってお前の脳と俺の脳を
最深部でシンクロさせるのさ。
そういって「み」は「ひ」の小指を握る。
同じく腹ばいのまま、「ひ」は気のない返事をする。
返事をしながら昨日咲いた赤い花の事を考える。
あれはくびの落ちやすい種類だから、
あまり暖かくないところで咲かせておこう。
「み」はまだマジックの話をしている。
やけに陽気なその声を遠くに聞きながら、
「ひ」は黙って眼を閉じる。
そのまま冷たい手を握り返し、
こうすればあの赤い花がいつ落ちるか、
「み」には分るのだろうかなどと
考えている。

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