ノート(歩の季)/木立 悟
 


日暮れの蒼のわたしへと
空も地も金を置きに来て
今日も緑に埋められていて
流れ込む色のわたしで居る



ひとり歩いて すれちがう
醜いものも 悲しいものも
みんなみんなわたしなので
鏡を持たないわたしで居る



まぶしさの素顔に現われて
触れることなく去ってゆく
規則正しい声のつらなり
治りかけた傷に似ている



無人の車の列が振り向き
一斉に失くしてしまう色
雨が捕らえ 空に散らし
やがて川に降りそそぐ色



塗り潰された表札の家に
それでも人は無口に住む
空の水 地の鏡の色になり
巡りつづけるわたしで居る






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