マイク/窓枠
わたしの彼は駆け出しミュージシャン
現代の若者と言えばロックバンドで
例にもれず彼はボーカルを務めてる
週末になれば仲間を集め
小さなライブハウスで叫んでるけど
スタンドは冷めきっている友達数人
と、わたしだけ
ノッてるようでノれてない
そもそも声だけ聴こえない
歌詞ノートを見た時は
「アツいね!」なんて
胸を踊らせていたのにな
(拡声器を使えばいいんじゃない?)
気持ち良さそうに歌う彼の
顔を見るたび誰も言えない
ライブ後のわたしはいつも
頭を振り過ぎて首が痛い ふり
小さな箱すら満たせない
彼の歌声はまるでまぼろし
だからね
わたしはマイクになになりたい
店前の道路まで震わす高感度
さらには彼の声帯と相性抜群
ギュッとにぎられて
やさしくキスされちゃって
ときには激しくされちゃうの
ノリノリでアツアツ!そんな
マイクに、わたしはなりたいのです
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