悪意の夜/まどろむ海月
 

 死臭は砂漠の彼方から
 ビルの谷間から



 「涙は阿呆が流すもの
  信じられるのは この痛みだけ」
 「でも 幸せを知っているから
  痛みもあるのでしょ」
 (おお 今夜は賢い君に 百回キスするぞ!)



今宵の悪意は
黒い翼となって
星空を漂うが
射落とす天使は
行方不明



さあ もう一度
豊饒の海へ
漕ぎだそう










  疲れたかい
  明け方の外気は
  冷たいんだよ
  もっと身を寄せて
   貧しい子どもたちをまねて
   震えながら 神の許しを乞おうか












           『悪意の夜』05年4月初出(前ローマ法王逝去の直後に書かれた)



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