音楽の定義/葉leaf
 
みな死んだ。二人で植えたあの桜の木がこんなにも呪わしいとは! 彼は座るのに適した平らな個所を見つけて腰を下ろした。波は規則的に岩を洗い、そのたびに彼の悲しみを圧迫し、彼と彼女との距離を少しずつ遠ざけていった。午後三時、太陽は少しだけ陰り、海はきらびやかだ。ふと、彼はつぶやいた。「音楽だ、音楽なんだ。」彼は確かめるように、もう一度つぶやいた。「音楽なんだ。」彼と彼女とその他すべてのものと、そして今のこの太陽と岩と波と、それらが混然と彼を悩ます中で、なぜか調和し進行する和音とメロディーが彼の狭い真空に宿った。その音楽が今、彼にとってはすべてだった。


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