さいごの慈しみ/吉岡ペペロ
 
風が春だった

ロカ岬にたったような風の匂いがした

曇り空にはひかりと影の階段があった

幻視にちがいなかった

ショパンの別れの曲が聴こえてきた

幻聴にちがいなかった

自殺にあこがれて何年経ったのだろう

幼いころのじぶんが

観念上の生き物のように思えた

それはじぶんを肯定する慈しみだろう

さいごの慈しみだろう



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