アメリカドリーマー/番田
誰の言葉もないままで綴り続ける小説群。小説とは小説のままだが、誰かの頭へ侵略することはない。今夜にも降り積もる雪のようにして誰それの家を覆うだけだ。競馬場で走らせられていく馬たちのように、今日を空の中に囲い込まれた、飛行機の中。刑務所の中ではないことへ希望を見いだして、向かうアメリカという国の中、身を投じる。
アメリカという国に、僕が初めて赴いた頃は同時多発テロが起きる直前の、90年代中頃だろうか。そんなふうにまだ訪れる観光客に両手を広げてくれているアメリカの中に僕は招き入れられた。
そして、そこはニューヨークだった。ニューヨークで、アートに関心のあった僕は星の数ほどある美術館から、小さな小さな街角のギャラリーまで、色々な場所へと歩き回った。緑や赤、ブルーなどの原色の多用した半抽象的な絵画というのはアメリカならではなのではないだろうか。
MOMAと呼ばれた近代美術館などを一巡すると、チェルシーエリアにてマンションや倉庫の一区画を貸し切ったスペースの展示を見た。むしろ、そういった展示が今の絵画を煽っているといえるかもしれないと考えながら、僕はまた妙な国を出た。
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