つっかえ棒/伊織
母は24歳のとき、実業家の三男である父と見合い結婚をした。
父は教養のある人間だが、商社マンにはあいにく不向きであった。
売掛金の回収が滞るとすぐに実家を頼りにして借金をし、
その金は祖母が何時の間にか一括払いをしていた。
母はひたすら頭を下げて礼を言い、
祖母に無利子で返済を行う、
この繰り返し。
程なく住宅ローンも父の収入だけでは払えなくなっていった。
ファミコンの端子づくり
タウン誌の配布
学童保育の指導員
引越し業者の受付兼作業員
歯科助手
この間、父の借金発覚回数は実に左手の指に到達し、
離婚騒動が
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