ギムレットには早すぎる/渡 ひろこ
厚い一枚板のカウンターに2杯目のカクテルが運ばれてくる。
君はウエイターに軽く会釈すると、すぐグラスに口をつけた。
鮮やかなライムグリーンのカクテル。グラスのふちについた唇
のグロスの跡を細い指先が拭う。長い爪の先にある小さなライ
ンストーンが、バーのほの暗い光に反射している。ネイルサロ
ンなんか行かないと言っていた君を変えたのは俺じゃなくてあ
の男か…。
ブルガリの香水が甘い体臭と溶け合って鼻孔をくすぐる。それ
だけでもう答えは明白だ。また君は恋に堕落している。
「彼が何を考えているのかわからない」すでに紅潮した頬で君
は嘆く。カウンターの向こうにある掛け時計は
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