吉野家にて/中原 那由多
昼時をちょうど過ぎようかという時間
決して長くはない行列の最後尾で
ただぼーっと店内を見ている
忙しなく揺れるエプロンと
食べ終わった食器のガチャガチャは
去年のマレーシアを思い出させる
独特なカウンター席では
赤い小山が二つ並んでいた
少数派有利のルールを受け入れても
妥協することに意固地になって
貧乏揺すりをしかけて我慢した
回る人々、回らされる人々
日常会話の席はなく
すれた欲望が腕組みするだけ
はしゃぐ人々、温まる人々
三六〇円から提供されるのは
忘れ去られてしまいそうな家族愛
待ちくたびれることもなく
欠けた部分を埋め合わせるように座席に案内される
さっきまで私がいた入り口では
すでに次の誰かが声を掛け合っていて
高みの見物のように熱いお茶を軽く啜ると
決められた台詞にも少しは色が出るようだ
牛丼、並盛、汁だくで
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