アカイミ/靜ト
初めて外に出た少女は
世界の広さを知らなかったから
庭を囲む高い塀など気にもならなかった
ねずみいろのたかあいかべさん
少し背が伸びた少女は、ある日ふと塀の向こうに気づいた
冬の白さに尖る枝に実る
赤い小さなたくさんの実
少女は世界にも「外」があることを知って
こころときめかせた
ひんやりした石の高いかべ
手足がのび、内では窮屈な程になった少女は
外の世界が見たいと夢見て
ある朝塀を越える決意をした
はしごやらテーブルやら椅子やら
どんどん内にあるものを重ねて塔をつくったけれど
ついに重ねられるものはなくなり
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