サイレン/ホロウ・シカエルボク
 
同じとしたもんだし
ガソリンスタンドに居たんだよ
前足のひとつをかばいながら歩いている猫が
だけど俺はそいつが歩くたびに
可哀そうだと思って欲しがっているみたいに見えたんだ
運命を認められないやつみたいでイライラした
きっといつもそうして餌を欲しがって生きてきたんだろう
まあその猫にしてみれば
俺の考えなんて知ったこっちゃないんだろうし
だいいち俺がそいつについて思うことは
そいつにとっての真実かというとそういうことではないのだ
数年前に閉店したパブの店先に貼ってあるストリップのポスター
色褪せた欲望の釣針が飛べない羽のように風にはためいている

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