連詩 「無題」 奥主 榮  萌木 碧水/鵜飼千代子
 
  静かに息を整え
  肩の力を抜いて
  見るヒマも無かった景色に瞳(メ)を留め
  足を止めていれば
  もう思い出の中の一コマにすぎないと思っていた
  そんな季節のように
  手すりに身をもたげ
  軽く瞳を閉じて
  ほほをなでる風にいこう
  これは プラタナスの香り
  遠い空には 白く飛行機雲

  地平線を染めていく光は
  なくしてしまった日々を いとおしむように
  けれど そこなわれてしまったのではないと
  静かに囁いている
  力強く伸びる 茜の雲
  大きく翼を広げたようだね
  と言ったのは あなた
  明日はどの美しさを見せてくれるのか
  重ね合わせることのできる全ては
  時の流れに歪められることもなく
  今という短い瞬間をつみながら
  大きな海のようなぬくもりに
  流れついていく
             1997年 7月 21日 萌木 碧水 & 奥主 榮

初出 NIFTY SERVE 旧 FPOEM

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