四人の詩人/……とある蛙
 
神田小川町から靖国通を歩く四人の詩人

一人は青い顔をして健康の大事さを説きぶつぶつ食べ物の名を呟く
一人は赤い顔をして声高に愛を語る
一人は黄色い顔をして金の儲け話を話す
そして、一人は黒い顔をして無言のままゆっくりとビルの狭間に消えてゆきかける。

四人とも自分が世界で一番重要であることを信じて疑わない。

 ーなんて奴らだ!ー

彼らに世間は見えていない。
世間は彼らを見ていない。
靖国通りを歩いても彼らの食い扶持は落ちていない。


青い顔をした詩人は その背に腐った死体を背負って、さらに健康を憂い

黄色い顔をした詩人は その背にひどい口臭の詐欺師の頭
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