秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
尊敬しているだけだ。
「いやぁ、でも僕『車輪の下』っての読んでみたんですよ。レポートのために。でも全然理解出来なくて困ってるんです」
彼はショルダーバッグから『車輪の下』の文庫を取り出してみせた。
「自習室に行こうか」
「あ、はい。すみません」
私はマウントレーニアのカフェラッテとイチゴ大福を買った。お釣りを募金箱に入れて自習室へ向かった。彼は私の後ろをついてくる。
自習室では何人かの学生がイスを並べ、作務衣姿で仮眠をとっていた。大学で数少ない女の子の学生が携帯で何か喋っている。私はなるべく人の少ない場所へ座った。とりあえず私は彼の名前を聞くことにした。
「君、名前はな
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