偽善と踊る/葛西曹達
善が何かも解らぬまま
偽善と踊る午前二時
秒針の音と心音が
同期して居心地は最悪
身体の奥の違和感
麻痺してる嫌悪感
引っ張り出せず焦燥感
背景だけは壮観
貴方たちに場をあげよう
沢山の玩具と色と
敷き詰められたカーペットで
至福の空間を繕って
然るに僕は最初から
現実に目を覚ましていた
誰にも干渉されぬ世界は
何処にも無いと解っていた
非日常への憧れを
内在化して逃げ纏う
一人の弱いニンゲンに
自由など歩いて来ない
善が何かも解らぬまま
偽善と踊る午前五時
光が差し込むのをただ
じっと待って蹲るだけ
消え入りそうな声で
戯曲の台詞を呟く
ただ 呟いて 眠る
ただ 静かに 眠る
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