30cmとちょっと/空都
『ちょっと、相談があるんですけど』
から始まった会話。
あなたにぺったりとくっついて尋ねた内容は
『どうしたら背が伸びるんですか?』
もっと深刻な話を予想していたあなたは
ちょっと拍子抜けしたような顔をしていたけど、
私にとっては今一番の悩み事なわけで。
からかうように笑ったあなたの第一声は
『お菓子とアイスを食べなさい』
だった。
うそつきだと思った。
けれど、
くっついた背中は誠実だった。
うそばかりのあなたは信用できない。
誠実なあなたの背中は信用できる。
だから、
『急に心臓が自己主張を始めたのは、あなたに対してじゃない』
と言い聞かせた。
『背中だけがすきなのよ』
うそじゃないけど
本当でもない。
180cm以上のあなたと
150cm未満のあたしが
物理的に近づく日はいつなのかしら。
あなたの真正面から
その切れ長の瞳に向かって
視線を近づけたいから
背を伸ばしたいの
なんて
私は当分言えそうにない。
戻る 編 削 Point(7)