『夢は夜ひらく』/東雲 李葉
 
街明かりを背に受けて。
振り向いたあなたは今日一番きれい。
何も知らない顔でこちらを見て。
風も音もない世界であなたの声だけが、
隔たりなく僕の耳に届いてくる。
誰も知らない場所へ連れてって。
今夜はもうあなただけのもの。

深い海を潜っていくよに、
まるで気付かず溺れていくよに。
どこにもいない。
本当は何も知らないままに。
落下していく速度も気にせず、
二人のようで一人の重さ。
どこまでも、どこまでも。

朝焼けの光を思い出す頃、
夢は静かに閉じていく。
時折見せる微笑みが少しずつ、
どこか彼方に消えていくから。
僕もそこに行きたいのだと、
張り上げた声は嗚咽となって、
やけに甘いミルクティーと静かに喉に落ちてった。
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