[能動喫煙]/東雲 李葉
たった一つだけ知っていたのは骨張った指が挟んでいたそれ。
感情も記憶も将来も何一つ共有できないけど、
たった一つだけ分かることは貴方の匂いの発生要因。
私はまだ肺を満たすほどの深呼吸をすることはできないのだけど、
大人になるということは言葉にするほど単純じゃない。
いつか身体が毒されてそれなしでは生きていかれなくて、
そんなことになったら私は私は貴方に依っても良いのだろうか。
あるいは哀れな中毒者のまま貴方を探してさまようだろうか。
誰か誰か、火を貸してくれませんか。
格好付けてフィルター噛んで貴方の味に早く馴染みたい。
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