郷愁/風恋誦
もう電柱の皮膚になった古いポスター
汚くて優しい町にみえる
かつて通学路だった道に ハートの落書
ブロック塀の透かしで途切れた 相合傘
あそこに住むおばさんが 恐いと駆けてく少年達
とにかく走る理由を見つけては ダッシュしたかった帰り道
間に合わなかったら次があると
腰の重い大人でいいのかと
すれ違いざま 斬られたような気持ちになった
いつか帰る場所は ひとつでいい
少し苦い思い出も そのままでいい
ダンボールを開いたら 昔の教科書
真空パックを開けた時みたいに 鮮やかに甦る
こんなに文字が大きかったのか
遠くまで歩いてきたのだな
フェンスにもたれて かわいらしいキスをした午後
教室でもよそよそしくて 咲くとか散るとかじゃない恋もあらん
校舎が取り壊されると聞いて
ぶつ切りされた教室を見たとき
日々まで浮かび 夕空に溶けてしまうようで切なくなった
いつか帰る場所は ひとつでいい
少し苦い思い出も そのままでいい
懐かしい思い出は ずっと待っている
どれだけ時を経ても ずっと待ってる
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