憧憬/真島正人
 
も似ていると私には感じられたからだ
だが結局のところ
私はそれを拾わなかった
私はいやだったのだ
私の内部にいるおびえを連想させるそれを持ち上げたとき
それが実は
まったく別のものであるということが
私の中のおびえは
泣きそうな顔をして体中を震わせ
気ぜわしく体内に胞子を噴出する
私はそれに突き動かされ
共生することで成長してきた
それの別の姿を
はっきりと見たくはなかった



なだらかな斜面を歩くとき
不意に私の頭を
殴る感触に驚くことがある
それはいつも「時間」だ
時間だけは私を赦すことがなく
私をいさめ
悲しませ
なじり続ける
私が胸の中に膨らませる幸福感は
すべて時間が見せた偽者の幸福感であり
私の署名した
あの置手紙には
本当は何も書かれてはいなかったのだと
私が悟りだすと
それは強い力でわたしを殴り
私に何も言わせないのだ

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